「99%完成しているのに、家に住めない」
─住宅建設業のDXが難しい、本当の理由
目次
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法人ソリューション事業本部
法人ソリューション営業部
ソリューション営業担当
筒井 真祐子
住宅建設の現場では、引き渡し直前にもかかわらず、設備や部材の不足によって工程が止まってしまうことがあります。
─ え、まだトイレ入ってないんですか?
─ 入ってないです
─ 来週、引き渡しですよね…?
こうしたやり取りが実際に起きています。柱も壁もできている。クロスも貼り終わっている。お客様も引っ越し日を決めている。それでも、たった一つの設備や部材が届かないだけで、お客様は家に住めません。最近では、物流の変化の影響で以前なら数週間で届いていた部材が届かない、塩ビ管などの資材不足で基礎工事そのものが始められない、という話もあります。住宅会社にとって本当に怖いのは、「引き渡しできません」とお客様へ伝えなければならなくなることです。工程を組み直す。職人さんを再手配する。お客様へ説明する。現場は一気に慌ただしくなります。しかも住宅建設業は、一つの案件に多くの部門が関わります。営業、設計、積算、工務、経理、アフター。だから一つの変更が、あとから思わぬところへ影響します。実は、住宅建設業のDXが難しい理由もここにあります。単に「システムを入れる」だけでは、この複雑さは解決しません。どこで情報が止まり、どこで確認作業が発生し、どこで利益が削られているのか。そこまで見ながら仕組みを考えないと、現場に定着しないからです。
DTSが住宅建設業のお客様と話すときも、単なる製品説明から入ることはほとんどありません。まず聞くのは、「今、どこが一番大変ですか?」です。
最新版、どれですか?

住宅建設業では、こんな会話が発生することがあります。
─ その仕様、先週変更入っています
─ え、発注しちゃいました
営業が持っている見積書。設計が修正した図面。工務が発注に使った仕様書。全員が「これが最新版です」と言うのですが、よく見ると少しずつ違う。そして、その違いに気づくのは、だいたい発注したあとです。住宅は一棟ごとに条件が違います。土地も違えば、お客様の要望も違う。打ち合わせ終盤で「やっぱりタッチレス水栓にできますか」という変更が入ることも珍しくありません。怖いのは、その変更の影響があとから広がっていくことです。営業段階の小さな変更が、数週間後に工程へ影響し、月末になって原価差異として見えてくる。だから後から「なぜ利益が減ったのか」を追いかけても、なかなか原因にたどり着けません。
Excel職人が、経営を支えている
住宅会社には、“Excel職人”がいることがあります。でも、「会社全体で今どれくらい利益が出ているのか」を見ようとすると、最後はExcelで集計し直している。そんな会社も少なくありません。そして、その集計ファイルを一番理解している人が、だいたい一人いる。部門ごとに出力されたデータを加工し、数字を合わせ、経営会議用の資料へまとめていく。少し条件が変わるだけで数式を調整しなければならず、その人が休暇に入ると、周りが少し不安になる。冗談のようですが、実際には“Excel職人”の経験と工夫で成立している業務もあります。もちろん、Excelが悪いわけではありません。住宅建設業は案件ごとの個別性が高く、柔軟に加工できるExcelに助けられてきた歴史があります。ただ、案件数が増え、会社規模が大きくなるほど、「人が加工してつなぐ」ことには限界が出てきます。営業は営業の数字。工務は工務の数字。経理は経理の数字。それを後からExcelでつなぎ直していると、リアルタイムで経営状況を把握するのが難しくなる。住宅建設業のDXで本当に重要なのは、単にツールを増やすことではありません。案件単位の情報を、経営判断まで自然につなげられるかどうかです。実際、HOUSING COREへ蓄積されたデータをもとに、「今どの案件で利益が出ているのか」「どこで原価が膨らんでいるのか」をリアルタイムで把握したい、という相談も増えています。以前はExcel職人が加工していた数字を、必要なタイミングで経営判断へ活かしたい。そう考える会社が増えているのだと思います。もちろん、会社ごとに見たい数字も、経営判断の仕方も違います。だからDTSでは、HOUSING COREを導入して終わりではなく、データ活用も含めて、お客様ごとに一緒に整理しながら考えることを大切にしています。
電子契約を入れたのに、楽にならない

たとえば電子契約です。電子契約システム自体は、もう珍しくありません。ただ、実際に現場で負担になるのは、「契約する瞬間」より、その後だったりします。契約後にファイルを探す。案件ごとに保存し直す。誰がどこへ格納したか分からなくなる。気づけば、“紙を減らす”はずだっ たのに、「管理するファイル」だけが増えていく。住宅建設業では、こうした「小さな面倒」が積み重なることで、少しずつ運用が止まっていきます。実際にお客様からも、「電子契約って、契約することより、契約後の管理の方が大変だったんですよね」という話を聞くことがあります。ある住宅会社でも、電子契約導入当初は利用率がなかなか伸びませんでした。ただ、基幹システム側から契約送信ができ、契約情報も案件へ自然に連携されるようになると、少しずつ利用率が定着していったそうです。別システムへ何度もログインしない。保存し直さない。契約状況を手作業で更新しない。一つひとつは小さなことです。でも住宅建設業では、その“小さな手間”が毎日積み重なります。電子帳簿保存法やインボイス制度への対応もあり、契約や請求まわりの運用負荷は以前より増えています。電子契約が定着すると、印紙税や紙管理コストの削減だけではありません。確認作業や郵送作業が減り、その分、お客様対応に時間を使えるようになる。住宅建設業では、2024年問題や担い手不足への対応も進んでいます。だからこそ、「人が頑張って回す」だけでは限界が近づいています。住宅建設業のDXは、こういう“小さな運用改善”の積み重ねで、少しずつ現場に定着していくのだと思います。
現場アプリが“別製品”だと、結局つらい
住宅建設業では、現場管理アプリを導入している会社も増えています。ただ、「職人さんが使ってくれない」という声もよく聞きます。入力が複雑だったり、操作が分かりづらかったりすると、現場では少しずつ使われなくなってしまう。導入することより、「使い続けてもらうこと」の方がずっと難しいのです。さらに、現場アプリと基幹システムが別製品の場合、「アプリには入っているけど、基幹側にまだ反映されていない」ということも起こります。すると結局、「どっちが正しいんだっけ?」が始まる。さらに大変なのが、問い合わせ先です。現場アプリはA社。基幹システムはB社。何か起きるたびに、「これはどこへ聞けばいいんですか?」となってしまう。現場としては、システム会社の役割分担まで管理したいわけではありません。ちゃんとつながること。ちゃんと動くこと。本当に求められているのは、そこだったりします。HOUSING COREでは、現場管理機能も基幹システムと同じ製品群として連携しています。だからこそ、「どこへ問い合わせればいいのか」が分かりやすく、運用面での負荷も抑えやすくなります。
「どっちのシステムを残すか」で止まる

住宅建設業では、近年M&Aやグループ経営が増えています。すると、会社ごとに会計ルールが違う。運用も違う。使っているシステムも違う。統合後、現場が静かに混乱します。ここで無理に「今日から全部この運用に統一します」とやると、現場はだいたい困ります。表向きは統一されたように見えても、裏側でExcel管理が復活する。これも、よくある話です。しかも、統合で大変なのは基幹システムだけではありません。「誰が管理するのか」「問い合わせ先はどこなのか」「グループ全体でどう運用するのか」ネットワークやセキュリティ、運用保守まで含めて整理が必要になります。HOUSING COREでは、グループ会社ごとに設定を分けられるマルチテナントや、会計運用に柔軟に対応できる仕組みを用意しています。ただ実際には、システムを入れ替えれば終わるわけではありません。統合後も、現場がちゃんと回る状態を作るかどうか。DTSには、ネットワークやセキュリティの専門部隊、運用保守サービス「ReSM」もあります。だからこそ、基幹システム導入だけでなく、その後の運用まで含めて、お客様と一緒に整理しながら伴走することを大切にしています。
「ちゃんと回る」が、一番難しい

最新版はどれか。変更は反映されたか。請求は漏れていないか。今日も住宅建設業の現場では、たくさんの確認が行われています。でも本来、もっと時間を使いたいのは、お客様との打ち合わせや、より良い家づくりのはずです。住宅建設業のDXは、新しいシステムを入れれば終わるものではありません。現場が無理なく使い続けられるか。情報がちゃんとつながるか。統合後も現場が止まらず回るか。実際には、そこが一番難しい。だからDTSも、「システムを入れて終わり」ではなく、現場や経営の課題を整理しながら、一緒に考えていくことを大切にしています。住宅建設業のDXについて、DTSと一緒に考えてみませんか。
